災厄の君へ
彼らのお陰で大体の状況は把握出来た──ユウはリオンの手を借りながらゆっくりと立ち上がる。それでも足下がふらついてしまい支えるリオンに甘えてしまう形となったが構い倒すなとばかりにやんわりと離して。
「ユウ」
歩み寄ってきたのはリムだった。
「何を見たの?」
恐らくユウが眠りの中でただの単なる夢ではなく未来を視ていたことに気付いた上で訊いているのだろう。ユウは額に手を触れながら思い出す。
「そうだな。……これは恐らく私の視点だが──全ての景色がぼやけて視える視界の中で暗がりに浮かぶ赤と従兄妹の姿がそこにあった」
スピカは眉を寄せた。
「従兄妹?」
「ユウの従兄妹さんって」
「シアちゃんよね」
ピチカの視線を受けてリムが続ける。
「じゃあ、今回のことは」
「関連性があるものと見て間違いないな」
「そいつはつまり兄妹喧嘩ってことかい?」
ローナはむすっとしながら、
「困るなぁ、我々を巻き込まないでおくれよ」
「そういうことは本人に言ってくれ」
「その本人とやらが見当たらないんじゃあな」
ネロは肩を軽く上げて落とす。
「お前たちもメヌエルに帰省していたのか」
「残念ながらその通りよ」
ユウの質問にルルトは腕を組みながら答える。
「まさかこんなことに巻き込まれるだなんて」
「そいつァ構わねェがこりゃ一体どういう仕組みなんでい?」
ラッシュは怪訝そうに眉を寄せながら、
「電波も通じなけりゃあ出口も見当たらねェ……この世界に実際に存在する森だとしても嬢ちゃん一人にそこまでの芸当が」
できますよ?
「……!」
その声は天から響き渡った。
「不可能なんてないわ」
今度はハッキリと。
「──私は、宗家の娘なのだから」