災厄の君へ
ユウ・ブラン──僕やピチカが本当に小さい頃からリムと一緒に面倒を見てくれている、謂わば幼馴染み的な立ち位置の人。いつも冷たく振る舞っているけどその成り立ちからコミュニケーションを取るのが苦手なだけというのは僕だけじゃない周りの誰もが理解している。
「ユウはツンデレだからな!」
……それはもちろん、この人も。
「五月蝿い」
「あふっ」
突然横から親指を立てて生えてきた犬のような耳と尻尾の際立つこの人はユウのパートナーであるリオン・ヴィオレスタ。犬のようなとは表現したが実際の種族はルカリオで争いを好まない優しい性格──なのだがそれを打ち消す変質的な言動が良いも悪いも寄せ付けない。
「あ、朝から、そんな……は、激しい……」
回し蹴りを喰らったリオンは床に転がり伏せてそんな言葉を零していたが頬に朱色を浮かべながら振り向くと恍惚とした表情で。
「でも、……イイ……好きです……」
これである。
「一気にCEROが上がるからやめぇや」
これには流石のドンキーもツッコミ。
「せろ?」
「知らなくていいのよ」
訊ねるピチカにリムは呆れ顔。
「……で。本当にいいのね?」
小さく咳払いをして話題を引き戻すべくリムが訊ねればユウはすぐには答えなかった。それとなく思うところがあるのだろう長いとも言い切れない沈黙の後目だけを逸らしてそっと口を開く。
「……ああ」