災厄の君へ
はたと。……言葉を失った。
そこは紛れもない森の中だったのだ。柔らかな草地も土の匂いも澄んだ空気も──そして目に映る緑の景色が何よりもそれを物語っている。
「……は?」
それでも俄かには信じ難いと眉を寄せれば。
「ほら見ろ」
一部始終を眺めていた少年が言うのだ。
「そんな反応するだろ」
目が覚めたら森の中だった、なんてそんなものはいっそのことどうだっていい。
……ただ。
何故、あいつらまでここに居る──!?
「ユウ」
リオンは眉尻を下げて言った。
「我々も誰一人状況を掴めていない」
ユウは辺りを見回す。
「気が付いたらここに居たんだ」
森の中──木々の妨げのない大きく切り開かれたその場所に居たのは自分含めて計十二人。メヌエルに帰省していた連中が居合わせるのはまだ分かるが正義部隊の三人まで巻き込まれている理由が分からない。
強制テレポートによりこの場所まで運んだのだとして──何を考えている?……シア!
「……駄目ね。電波が通じない」
それまで端末を耳に当てていたルルトは短く息を吐いて肩を竦めた。
「そっちは?」
直後に木の高い場所から降りてきて音もなく着地したミカゲにルルトは視線を投げかける。
「見渡す限りの森で御座る」
ミカゲは腕を組んで木々を振り返りながら。
「ただ──このような場所はメヌエルの何処にも無かったはず。何らかの不可思議な力が働き閉じ込められているものと見た方がいいで御座るな」