災厄の君へ
閉じた瞼を開けば瞳に星の煌めきを映し出す。
刹那──少女を中心に置いて青白い光の波動が三度打ち出される。誰もが寝息を立てて夢の世界に抱かれるそんな静かな夜の事だった。
「うふふ」
少女は薄笑みを浮かべる。
「おにいさま……」
夢を見た。
はっきりとしない視界の中。暗闇に浮かぶ赤。
少女は嘲るように嗤う。
「さようなら」
ばちん、と弾かれるようにして瞼を開いたが途端に襲う喉の痒みに思わず咳き込みながらそれまで仰向けだった体を横に返す。喘鳴のような呼吸音と目から滴る水滴に自分の見ていた夢がただの夢ではなかったものと思い知らされる。
「ユウ!」
視界が赤く濁って、……くそ。目を洗わないと。
「誰か! 水を頼めるか!」
酷く慌てた聞き覚えのある声が頭の上から。
「あいよぉ! 頭から被せていーい?」
……は?
「うぉぶっ」
我ながら情けない声を出してしまった。
「び、びしょ濡れだな……」
「興奮すんな」
馬鹿を押し退けて飛び起きる。
「おいっ、何をす──」