災厄の君へ
ユウは眉を寄せる。……今のは。
「悪い未来だと断言するには断片的過ぎる」
そう言ってリオンの手を剥がしながら。
「……ただ」
ぽつりと呟く。
「アイツが関わってくる可能性がある」
予知の中で見えたあの薄桃色の髪は。
笑みを深めたのは。間違いなく。
「止めるのか?」
「いや」
ユウはそう言って再び歩き出す。
「今すぐに押しかけたところで知らぬ顔をされるのが関の山だ。最善じゃない」
反応が遅れたリオンは慌てて追い付くと、
「放っておくのか?」
「そうするしか方法がない」
ユウは淡々と答える。
「何より、学んだからな」
ハッとしたようにリオンは注目する。
「この能力を使って未来を変える為にはギリギリまで引き付ける必要がある」
思い出す。
霧のような雨の降り頻る日の事を。
「……万能とは言い難いな」
「それをお前が言うな」
ユウはリオンをひと睨み。
「これからどうするんだ?」
「街に行って宿を取る」
途端、リオンは目を輝かせながら。
「ラブホですか!?」
「そんなわけがあるか!」
水を得た魚のよう。
「私は……普通のホテルでも……」
「ペットホテルに空きがあればぶち込んでやる」
「ありがとうございます!」
「喜ぶな!」