災厄の君へ
そこまで話した後でユウはゆっくりと歩き出す。
「やはり。貴殿は優しいな」
その隣を歩きながらリオンは言った。
「あの茶番は探りを入れる為か?」
「うん?」
ユウは目を逸らす。
「本気だと言ったら?」
「ほざけ──」
その時だった。
「、!」
心臓の音が大きく鳴り響いて。
視界が眩む。
「ユウ?」
──暗転する。
森の中。息を弾ませて走っている。
何かを追いかけている。
洋館が見える。
今度は何かから逃げている。
薄い桃色の髪が揺れる。
笑みを深める──
「ユウ!」
ばちん、と。弾けるように引き戻された。
「……大丈夫か?」
いつの間にか正面に回っていたリオンが肩を掴み真剣な表情で見つめている。
「何を見たんだ?」