災厄の君へ
「らしくもない」
リオンが言うとユウの眉がぴくっと反応した。
「普段の貴殿であれば実親であるかのような振る舞いをされた時点で罵詈雑言を浴びせそうなものだったが見当違いか?」
……ユウは黙っている。
「家を出たのは従兄妹殿の為か?」
目を逸らす。
「お前には関係が──」
「元より責めてなどいない。貴殿に劣等感を抱き憎悪に苛まれる従兄妹殿から距離を置こうとする判断は何より正しかったかのように思う」
……読まれている。
「あれが貴殿が血を嫌う要因なのか?」
リオンが訊ねるとユウは諦めたかのように。
「……そうだ」
宗家は昔から分家より優秀な家系だった。
だからこそ。
分家は宗家に抗えない。
そんな連鎖に決着を付けたのが。
皮肉にも──自分だった。
シアは未来を視る目を得られなかった。けれど彼女なりに予測という形で宗家を導いてきた。それでも尚彼女の両親は予測より予知に価値を見出し実の娘である彼女を事あるごとに分家の長男たる自分と比べては見下した。
分家のポケモンでありながら宗家の飾り物となり実の両親含む分家の連中には敬遠され──居心地の悪さを感じないはずもない。
だから。
特殊防衛部隊への入隊を志願した。
自分の為にも。そして……彼女たちの為にも。