災厄の君へ



それを聞いても尚ユウの目は冷たく、まさしく氷のようだった。これ以上は時間の無駄だと判断したのか無言で立ち上がり別れ際の挨拶すら交わさず扉へ向かうのをリオンもルーティも順々に立ち上がると追いかけて。

「おにいさま」

扉を開くべく手を掛けたタイミングだった。

「またいつか」

きっと笑みを含んで告げられたのであろう優しい声音。けれど振り向くことができない。

「……ああ」

ユウは扉を開きながら返す。

「またいつか」


再会を望んでなどいない。

そんな意味の含まれた言葉だった。


「ユウ……」

先を歩くユウの後ろを遅れてついて歩きながらルーティは眉尻を下げて呟いた。彼は応えなかったがそこで何だどうしたと訊ねられていればそれはそれで言葉を詰まらせていたと思う。

……それだけ。今は掛ける言葉が見つからない。

「、?」

不意にユウが立ち止まった。暗く視線を落としながら歩いていたルーティはその背にぶつかりそうになるも直前で気付いて立ち止まり、怪訝そうに後ろからそっと顔を覗かせる。

「帰っていたのか」

対面したその男は目を丸くして口を開く。

「……ユウ」
 
 
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