災厄の君へ
戦士にも休暇はある。
それは正義のみに関わらず悪にだって。
「ピチカ!」
エックス邸のエントランスホール。
「にぃにってばもう来たの?」
「早い方がゆっくり出来るからな」
驚くピチカにふふんと笑って返したのはスピカである。敵対組織亜空軍に所属している彼が、敵対意識の高い正義部隊も顔を出すようになったこの場所をわざわざ訪れる理由なんて皆まで話す必要もないだろう。けれど今回は再会ばかりが目的ではなくそれは他に居合わせた面々も傍らに置いているキャリーケースが物語っている。
「忘れ物はない?」
「まー帰省するだけだしな」
そうです。
僕たちX部隊と──プラスアルファは。
大型の連休を確保した上で。
故郷に一時帰省することになりました。
「リンク達はいいの?」
「ここが家のようなものですから」
もちろん強制ではないので屋敷に残るメンバーもちらほらといる。ふと内一人が気掛かりになってルーティはそっと顔を向けた。
「ユウも?」
名前を呼ばれたその人は冷気を纏いながら。
「私には無縁の話だ」
冷たく刺すような視線を返す。
「放っておけ」