災厄の君へ



ルーティは背筋をぴんと伸ばして声を上げた。

「ルーティ・フォンです!」

緊張しないように緊張しないようにと心の中で繰り返し唱えていたというのにこの有り様。羞恥のあまり目尻に涙が浮かぶのを感じながら膝の上で握った拳を更に力強く握り締めて。

「ゆっ、……彼の、所属している特殊防衛部隊X部隊のリーダーをしています!」

それを聞くと女性はくすくすと笑って。

「あらあら。そう緊張しなくてもいいのに」

思っていたより優しそうな人で拍子抜けした。こうものっけから醜態を晒したのでは手厳しい言葉を貰うものだと思い込んでいたが。

「成る程。ラディスの息子か」

直後にギクリと。

「……良い目をしている」

ブランの家系が全てそうなのかは知らないが少なくとも超能力者であることは確か。となればやはり見る目というものが違うのだろうか──ただの単なる感想も意味のあるものかのように聞こえてくる。……実際そうなのかもしれないが。

「……ありがとうございます」
「お隣の方は?」

質問攻めというやつである。次いで女性がリオンについて訊ねるとユウは密かに拳を緩く握った。当然の事ながら顔を合わせて早々、根掘り葉掘り聞かれるのはあまり良い気はしないのだろう。

「……こいつは」
「伴侶です」


ん?


「……伴侶?」
「はい」

リオンは至って真剣な表情で。

「私と彼は生涯添い遂げる事を誓い合った運命共同体──即ち終生の伴侶です」

ちょっと待てええぇええ!?
 
 
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