災厄の君へ
何というか言葉に上手く表せない。一目に見て広くて大きくてただの単なる一軒家じゃないということくらいしか。どっしりと構えた木製の門の奥には庭付きの和製家屋が佇んでいる──暫くルーティが呆気に取られているとユウは呆れたように小さく息を吐き出した。
「大袈裟だな。驚くことじゃない」
「私の家も似たような感じだぞ」
……!?
「この辺の土地は安いからな」
ユウだけじゃなくてリオンまでお金持ちだったなんて。そう考えると何だか自分の住んでいる家が急に小さく見えてきた。別に不自由はないけどお金を貯めて広い家を買うべきかな……
「執事とか」
「居るわけがないだろう」
ユウは門の前に立つと少し視線を逸らした後、嫌々ながらに扉を叩いた。直ぐさま門は軋みながら開かれてその先で和装に身を包んだ男性や女性が左右均等に石畳の道の脇に並んで深々と。
「お帰りなさいませ。ユウ様」
……これが金持ちじゃなかったら何なんだ。
「どうぞ此方へ」
一人の女性が進み出る。
「大旦那様と大奥様がお待ちです」
「どちらの二親だ」
ユウの問いに女性はひと呼吸置いて答える。
「宗家の、大旦那様と大奥様でございます」
あれ?
「……そうか」
静かに目を逸らすユウにルーティは疑問符。
記憶違いでなければユウは分家のポケモンだったはず。なのにどうして宗家のシアの両親がユウのことを待ってるんだろう……?