災厄の君へ



……宗家。分家。

詳しいことは分からないけれどあんなやり取りを見せられたというのにこのまま何も知らないままでいる訳にはいかない──墓石の前で手を合わせ終わった頃ルーティは誰より早く口を開いた。

「僕もついていくよ」

ユウは閉じていた瞼をそっと開く。

「部外者だろう」
「ううん──そもそも僕が無理に連れ出そうとしなければこんなことにはならなかったんだから」
「私も同行させてもらうぞ」

話に加わるリオンをユウはひと睨み。

「そうしてあげて」

ルピリアが口を開く。

「お家の事情は知らないけれど──口に出さないだけでユウくんも一人は心細いだろうから」

目上の、それもラディスの妻であるルピリアにまさか酷い口の利き方など出来るはずも。ユウは諦めたかのように小さく息を吐き出すと墓石に背を向けて歩き出した。言葉を交わす余裕も与えられずルピリアに軽い会釈をしてその後を追いかけるリオンを目にルーティはルピリアを振り返る。

「行ってらっしゃい」

その言葉に深く頷いて。

「うん!……いってきます!」


冷静に思い返してみればユウは幼馴染みなのに一度もその自宅に遊びに行ったことがなかった。同じ幼馴染みであるリムの家には何度も遊びに行った記憶があるのに──そういえば彼女は有名格闘道場の娘とだけあって道場で遊ばせてもらったり寝泊まりできたのは貴重な体験だったなあ。

……ユウの家はどんな家なんだろう。


「、?」

少し先を歩いていたユウが足を止めた。

「……ここか?」

リオンが訊ねれば、

「ああ」


……いやあの、……ちょっと待って。


「ええぇええぇえっ!?」
 
 
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