災厄の君へ



心臓の鼓動音が。……危険信号のように。

思うように声を出せないまま。そうして殺気に限りなく近い鋭い眼光を向けられても尚対するシアは変わらず薄笑みを讃えてユウを見つめていた。

「、ゆ」

ようやく声を絞り出したが直後。

「ユウ」


ひと声呼んだのは。


「ラディス殿の墓を吹き飛ばすつもりか?」

リオンの投げかけた最もらしい意見に突き刺さるような空気が次第に落ち着きを取り戻していくのを肌に直に感じた。ユウが無理矢理閉じ込めるようにして瞼を閉ざすと次に開いた時には瞳は元の紫色に戻っていて──安堵の息が零れる。

「素敵なお友だちをお持ちなのね」

シアは静かな口調で。

「本当に」


……妬ましい。


「、!」

そう聞こえたのは、はたして自分だけだっただろうか──リオンは一瞬だけ目を開いた。

「おにいさま」

シアは取り繕うように笑いかける。

「いつ頃お見えになるの?」

まるで張り付けられたかのような違和感だ。

「其方に顔を出すつもりはない」
「まあ、そんな」

ユウが答えるとシアは眉尻を下げて。

「でしたら私自ら両家に報告いたしますわ」

憂いを帯びながら。

「おにいさまは戻らないけれど──確かな絆と信頼を携えた素敵なお友だちに囲まれてそれはそれは元気に過ごしていらっしゃいます、……と」
 
 
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