災厄の君へ
「あら。妹さんだったのね」
「妹じゃなくて従兄妹だよ母さん」
すぐに訂正を入れたがルピリアはにっこりと。
「どうりで似ていると思ったわ」
ええ……
「雰囲気がそっくりだもの」
「母さん……それ本気で言ってる……?」
前々から自分の母親は時折抜けているところがあるものと思っていたがこれは流石に庇いきれないところがある。確かに髪の色は紫と桃色で近しいかもしれないが着ている服の色がそれぞれ黒と白であることも相俟って雰囲気がまるで違うし穏やかで優しい印象であるシアに対し、ユウは常に冷たいオーラを放っている。これがお世辞にも似ているなどとはとてもじゃないが言えない。
「ふふ。……お母さまが仰っていることはもちろん間違いなどではありません。同じブランの血が流れているのですから当然です」
シアはくすくすと笑う。
「けれどお友だちがそう感じたように私とおにいさまが似ていないというのもまた事実」
ふわりと浮遊して進み出ながら。
「何故なら私がミュウの血を色濃く受け継ぐ宗家のポケモンで──おにいさまがミュウツーの血を色濃く受け継ぐ分家のポケモンだから」
宗家?……分家?
「シア。余計な事を喋るな」
そこでようやくユウが口を開いた。
「あらどうして?」
「お前には関係ない」
「おにいさまったら怖がりなのね」
空気が。──ぴりぴりと。
「……シア」
ユウの瞳の色が金色に塗り替わる。
「あまり私を怒らせるな」