災厄の君へ



それはまるで教会で祈りを捧げる修道女のように一見して神聖な教えを述べているようだけど。失礼ながらそれが掠めもしない程に気になる一文が既に答えを照らし合わせようと。

「えっと」

そうしてルーティが訊ねるよりも先に。

「申し遅れました」

少女はスカートの裾を持ち上げて頭を下げる。

「シア・ブランと申します」

顔を徐ろに上げれば微笑。

「お察しの通り──そこにいらっしゃる方は私の従兄妹です」

ルーティは風を切る勢いで振り返る。

「……えっ」

ユウは至極ばつが悪そうな顔をして舌打ち。


「ええぇえええぇえっ!?」


ゆ、……ユウの……従兄妹……!?


「おにいさま」

少女シアは肩を竦めて愛想よく笑いかける。

「お久しぶりです」

従兄妹なのだから血が繋がっているとは一概に言っても似ているかどうかと言ったら──いやそれでも幼い頃から一緒に過ごしてきたのだとすればそれとなく空気感とか。雰囲気とか。

「、……」


似てない。


「なななっなんかごめんなさい」
「おにいさまが口下手なのは周知の事実だもの」

全く言葉を返さないユウにどうにも居た堪れなくなってルーティが謝ると対するシアはくすくすと笑った。この性格が今に始まった訳ではないことは家族間なら暗黙の了解レベルに知れ渡っていることだろうがそれでも実際こうも冷たくあしらうのを目にしては冷や汗が滴る。

「ソ、ソウデスカ……」

口角をひくひくさせながら。ふと視線を感じて振り返った先にはリオンが見つめていて。心の声がダダ漏れだったのだろう深く頷いて返すのだからお察し。……やっぱり、似ていない。

あまりにも似てなさすぎる……!
 
 
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