インヴァースの輪舞曲
……声が聞こえる。
こんなに戦ったのは久しぶりかもしれない。事件を終えてからというもの喧騒から解放されて穏やかな日々を送っていた。それでも仕事は舞い込んでくるし力は使わずとも頭を使うことが多く心労というものを溜め込んでいたがそれをここに来てようやく解消できた気がする。
「はい」
……やっぱり。
「ぼくは戦うのは嫌いです」
ばちん、と。弾かれるように飛び起きる。
「今すぐその綺麗な顔に──」
「ちょっと」
嫌な動悸がする。
込み上げる吐き気に口元を片手で覆う。
「ロックマン?」
……夢。
「大丈夫?」
怪訝そうな声が現実に引き戻した。
吐き気は跡形もない。
「あ、……ああ」
心臓の音は知らぬ顔で穏やかな音を奏でる。
「……おはよう」