インヴァースの輪舞曲
「おはようございます」
「おはよう、ゼルダ」
注文口へ向かうと彼女が出迎えた。
「朝食はどうされますか?」
「あまり難しいのはゴメンだぜ?」
「わっ」
……驚いた。顔を出したのはケンである。
「修行してるのかと思ったよ」
「リュウじゃねえんだから」
料理が出来るという点にも驚きだ。そりゃまあこうして誰かが手伝わなければこの人数なのだから手が回らないことだろう。ルーティは談笑しながら朝食を注文する。その丸太のように太い腕だと調理器具をうっかり壊したりしないものだろうかと要らぬ心配を頭の片隅に置きながら。……
「おにぃ!」
朝食を頂いていたその時である。
「どいつもこいつも朝から騒がしいな」
「ファルコ」
苦笑気味にフォックスが一言呼んで宥める。
「お、おはよう?」
「おはよ!……っじゃなくて大変なの!」
ピチカは手に持っていた端末を急いで操作すると表示された画面を見せつける。
「スマッター?」
「某呟きサイトのパクリだろ」
「こら」
ルーティは首を傾げる。
「あっメッセージ更新されちゃった」
ピチカは一度端末を返すと慣れた手付きで操作して再びその画面を見せつけた。最近の子って片手でもフリック操作が速いから尊敬するなぁ……
「見てる?」
「う、うん」
「もーちゃんと見て!」
牛がいる。
「……あれ?」
最も呟かれているワードのランキング。
そのトップには見覚えのある名前。
「何であいつの名前が」
ファルコも身を乗り出しながら。
「だから大変なんだって!」
ピチカはその日一番大きな声を張り上げる。
「フォーエス部隊の隊長さんがオンライン対戦で世界戦闘力一位を獲得しちゃったんだってばー!」