インヴァースの輪舞曲



案の定といったところ。あれよあれよという間に人が集まり大会並みの賑わいを見せられたのでは暫く遊べそうにないなと判断する他ない。ルーティはロックマンに声を掛けようとしたがその横顔を目に口を噤んだ。分かりやすくモニター画面に釘付けになっており梃子でも動かなさそうだ。

「あっ」

仕方なく一人バトルルームを抜け出れば人影を見つけた。壁に寄り掛かる形で煙草の煙を吹かせているのはウルフである。確かに部屋の外で吸ってくれているが屋敷の中である。そこまで突っ込んだら拳骨でも飛んできそうなものだ。

「終わったのか」

ウルフはルーティに気が付くと煙を吐き出して煙草の火を携帯灰皿に押し付けた。

「ううん。終わったというか」

皆まで言わずとも。

「食堂、空いてるかな」

言えばウルフは歩き出した。

「あっそうだ。聞いてよウルフ」

ルーティはその隣に並びながら話し出す。

「オンライン対戦で──」


その日。

ロックマンは部屋に戻ってこなかった。


部屋の場所を伝え忘れたのが原因という話でもない。夜の十二時を過ぎるまでリビングで待ってみたが一向に現れないので居合わせた夜更かし組に伝言を預けてルーティは部屋へ。それでも暫くの間は落ち着くに落ち着けず待っていたのだが同室であるウルフにさっさと寝ろと電気まで消されてしまったのでは。就寝する他ない訳で。

まさか迷子になるような造りの屋敷でもないはずだけど……ロックマン、大丈夫だったかなぁ……
 
 
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