井蛙の教訓
漫才をしている場合ではないのだ。
「失敗したらどうするんだ?」
スティーブが何気ない疑問を口にした。
「臨機応変に対応するで御座る」
「具体的には?」
「そ、」
興味を持ってくれるのは有り難いが。
「……それは、その時で御座るよ」
あまり具体的に話すといざ上手くいかなかった時に我先にと行動されてしまう恐れが──危惧して説明をはぐらかしたが「分かりました」と言ってブルーは微笑んだ。家に侵入するべく移動をしている最中だったがふとエンダーマンが足を止めて遠くを見つめているのに気付いて。
「どうかしたで御座るか?」
怪訝そうに訊いたが常に無口である彼が答えるはずもなかった。直ぐに向き直ったかと思うと空間転移を使って即座に距離を詰めるエンダーマンにミカゲはびくりと肩を跳ねる。
「わぁー便利ですね!」
「羨ましいです!」
二人に持て囃されてもエンダーマンは無言。
「こいつに任せりゃいいんじゃないか?」
スティーブは提案する。
「今みたいに移動すればバレないだろ?」
「はは……次回からそうさせてもらうで御座る」
ミカゲは相も変わらず苦笑い。
「今回は拙者だけで充分で御座るよ」
本当は。今回だけじゃない。
自分一人でも。……これから先だって。
夜の闇に黒い羽根が舞い落ちた。
エンダーマンはもう一度立ち止まって振り返る。視線を向けた先には満天の星が瞬くだけ。
「エンダーマンさーん!」
しずえが呼びかける。
「いきますよー!」