僕たちの道標
物音。即座に目を向ける。
「ねえね」
ゼニガメが呼んだ少女はむすっとしている。
「探偵気取りかしら」
レッドは口を噤む。
「ご明察。私たちはこの地方出身じゃないわ。森林都市メヌエルからやってきたの」
少女はゆっくりと歩みを進める。
「、聞いたことがない」
「そうかもね。私たちの生まれた研究所は極力外部との接触を避けてきた。──貴方が語った保護団体さんの目から逃れるように」
目前まで迫られた時レッドは蛇に見込まれた蛙のような感覚に襲われていた。紅の双眸に正面から捉えられ逃れられず。まるで心の奥底まで見透かされてしまっているかのようで。……
「!」
吹き零れた音に硬直が解けたレッドはコンロの火を消して息を吐く。
「忠告はしたわ」
少女はようやく側を離れたが言葉を続ける。
「──探偵ごっこはやめなさい」
雨の音が遠く。
「妹。貴女が持ってきなさい」
「でっでも」
影を抱いて去り際に呟く。
「……人間を簡単に信用しないで」