僕たちの道標
「あの」
「──ッッ!」
レッドは肩を跳ねた。
「あわわ」
思わぬ不意打ちとなり脅かせてしまったものと気付いて少女は慌てる。
「ごめんなさい」
「だ、大丈夫」
二階から降りてきたのは水色の髪の少女。毒を入れていないか警戒でもしたのか。
「スープ?」
「といっても簡単なものだけど」
あれこれと思考を巡らせながらもきちんと手は動かしていた。母親は出張でこの場には居ないがいつも手間が省けるからと具材を切ったものを冷凍しているのを知っていたので栄養価の高そうな具材をコンソメスープの中に放り込んで味を整え煮込んでいたのだ。
「……味見する?」
レッドが訊ねると自分が見入ってしまっていたことにようやく気付いたのだろう少女はぼっと頬を赤く染め上げて慌てふためく。その様子に思わず吹き出してしまうと少女は警戒が解けたのか照れ笑いを浮かべながら肩を竦めて。
「どうぞ」
レッドは小皿に移して差し出す。
「ふぅっふぅっ」
少女はそれを息を吹きかけて口にする。
「……うん! 美味しい!」
やっと、素直に笑ってくれた。
「君もポケモンなのかい?」
訊ねると少女は曖昧に笑って頷いた。
「ゼニガメだよね」
「! 凄い。分かるの?」
「一目でってわけにはいかないけど」
レッドは苦笑い。
「御三家と呼ばれる種のポケモンは特別な区域でしか生息が確認されていないから保護団体が責任を持って管理しているんだ。トレーナーを目指す初心者にとっても非常に扱いやすいからポケモン研究所に提供されることもある。とはいっても地方によって提供される種も研究所も厳密に定められていてカントー地方の御三家はずばり君たちの種を指すんだけど──」