僕たちの道標
それから──とんとん拍子で話は運んで天空大都市レイアーゼへ赴いて。そもそも招待を受けたのはレッドなのだから他三人がそんな当たり前の顔をしてついて来てもよかったものだろうかという心配が頭を過ったが彼らは同行人ではなくレッドの手持ちのポケモンなのだから問題ないだろうという自論で決着がついた。
「よろしくね」
「、ああ」
歌うのが好きだという桃色の髪の彼女を一目見た瞬間から簡単な気持ちで目を合わせるのも難しくなるほどに分かりやすく一先ずは握手だけでも済ませようとするネロ。
「あそぼーう!」
「わ、引っ張らないでよう!」
歳が近いということで親近感を感じて、金色の髪をツインテールにして結った少女を積極的に好奇心で連れ回すローナ。
「あら」
シフォンはというと。
「口で言って分からないのなら、何だったかしら」
「あはぁぁ……っ絶妙な体重のかけ方、才能のある踏み位置、我が生涯に一片の悔いなし……」
……これは放っておこう。
「ふー」
屋敷の中にある図書室で本を読み終えてひと息つく。あまりにも設備が整いすぎていて色々と勘繰ってしまいそうだがとりあえずは気になる本だけでも読破してしまいたい。
思えば。戦いにばかり目を向けていた。強くなることに拘りこそなかったものの勝負の結果は勝利以外に有り得ないものだと、凝り固まった思考が身に染み付いていた。以前までの自分であればこうも呑気にポケモンに関するでもない小説だとか、観光地を紹介するだけの本なんて目もくれなかっただろう。自分自身の変化には驚くものがあるが嫌な気分じゃない。
彼らと出会うことで環境が変わったのは事実。本当に救われたのは自分かもしれない。
「っと、……」
レッドは時計を見上げて慌てて立ち上がる。
「そろそろ戻らないと」
心配性の誰かさんたちが怒るからね。……