僕たちの道標
その時だった。──黒い羽根がふわりと。ヤミカラスかなと顔を上げれば、まるで見計らったかのように一通の手紙が舞い落ちる。目をぱちくりさせて見守っているとシフォンが代わりに手に取って何の躊躇いもなしに封を開けた。
「これ。招待状だわ」
一枚の紙を取り出して読み上げる。
「特殊防衛部隊」
X部隊。
「貴方に宛てられたものよ。レッド」
「……俺に?」
きょとんとした顔でシフォンから招待状を受け取り改めて内容に目を通す。それは彼女が軽く読み上げた通り天空大都市レイアーゼに拠点を置く予定である特殊防衛部隊X部隊に配属しないかといった内容のものだった。
「れいあーぜ?」
「うん」
レッドは頷いて空を見上げる。──まさかこの場所から見えるはずもないが自分達が普段雲だと認識しているそれよりも上にその天空大都市レイアーゼはある。ジムやリーグがある訳でもないので他の誰かが憧れていても自分としては更々興味も湧かなかったのだが。
「行ってみたい!」
「面白そうね」
彼らはこの様子である。
「ネロは?」
「俺じゃなくてお前だろ」
一切視線を合わせずさらっと返されてしまって何となく言葉に詰まる。彼も別段意地悪をしているつもりはないのだろうが流石に旅先くらい自分で決めろと言いたいのだろう。
「お家はどうするの?」
「専用の屋敷があるみたいね」
「一人一部屋?」
「それはどうかしら」
優柔不断に頭を悩ませている間に両側から招待状を覗き込んだローナとシフォンが口々に詳細的な内容に関して触れながら話している。部隊とか言われても俺自身は非戦闘員だし──
「簡単な任務もあるみたい!」
部隊というからには他にも隊員がいるだろうしそうなったら落ち着けるスペースとか。
「屋敷には図書室があるのね」
……俺がよくても彼らには身に余る可能性も。
「バトルルームだって!」
レッドの耳がぴくりと反応した。
「超高性能のバーチャルシステムで完全完備! 試合の中でどんなにやばい怪我を負っても試合を終えれば完治してるらしいよ!」
「すぐに行こう」
ネロは呆れたような顔でため息をつく。
「……戦闘バカ」