僕たちの道標



青い空。白い雲。この世界を照らす太陽がいつまでも何処までも眩しくて。──そんな静寂を掻き消すように地響きを立てて地面に横たわるのはたいようポケモンのウルガモス。誰かが雄叫びを上げるとそれを合図に観客席から歓声が湧き上がり花火だ紙吹雪だのお祭り騒ぎ。

「何ということだ!」

それまで実況席に座っていた男はマイクを手に立ち上がり興奮しきった様子で。

「本当に──本当にカントー地方を代表する三匹のポケモンだけでイッシュリーグを制覇する男が現れてしまった!」

歓声を浴びせられながら少年は息をつく。

「チャンピオン、ここに敗れます!」

少年の向かい側に立っていた男はウルガモスをボールに戻すと額に滲んだ汗を拭って。

「勝者──」

実況の男は少年を指差す。


「レッド!」


大勢の人に見送られながら険しく聳え立つ要塞──イッシュリーグを後にする。

「やったぁ!」

腰に抱きついてきたのはローナだった。

「楽勝だったね!」
「思ったより退屈だったわ」
「ま、苦戦する相手じゃなかったな」

緊張の糸が一気に解けたが口々に述べる彼らにレッドは苦笑いを浮かべる。

「次はどこに行くの?」
「うーん」

これに関しては完全に目測を誤ってしまった。もっと気長に気楽にのんびり自分探しのつもりで旅をする予定だったもので時間が有り余ってしまっているのだ。これで帰ったら忘れ物でもしたのかと母親が目を丸くしてしまいそうだ。

「れっどぉー」
「あまり困らせるなよ」

唇を尖らせるローナの首後ろの襟を掴んで引き剥がすネロ。ぶらんぶらんと吊るされている。
 
 
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