僕たちの道標
花弁の渦の中から飛び出したのは選出は絶対に有り得ないと踏んでいた炎タイプの彼。
「カメックス!」
発言もなしにアイコンタクトと身振り手振りでここまで意思疎通を──彼らは仲間に加えられて日が浅いどころか間もないのにもうそれほどまでの信頼と絆を築き上げたとでもいうの?
「──!」
次の瞬間カメックスは地面を鳴らし砂埃を巻き上げていた。次に視界が晴れるとそこには戦闘不能状態であるカメックスの姿。
「さっすがネロ!」
「自慢の立役者というものだわ」
「うるせぇな」
ばつが悪そうに視線を返すネロもなんだか満更でもない様子で。自慢げの妹たちを背に僅かに笑みを浮かべてはブルーを見据えながら。
「で。次はどうすんだよ」
その言葉は──勝負の展開の速さに呆気にとられる彼女ではない"彼"に向けているのだ。
「レッド」
次はどうするのとばかりにローナがきらきらとした期待の眼差しを彼に向ける。対する少年は帽子の鍔を掴みながら笑いかけるのだ。
「楽しもうか」
ああ。歓声が遠く。
これだから勝負はやめられない。
「もちろん!」
そのやり取りにグリーンは満足げに腕を組んでほくそ笑む。様々な感情が入り混じり交差する勝負こそ目で見て楽しませるものがある。
求めていた光景がそこにある。
「ブルー! 終わったら交代だ!」
「まだ二匹目ですよ!」
レッドは思わず吹き出す。
「あははっ」
晴れ渡った空のような表情で。
「──順番だよ!」