僕たちの道標



全部リセットして。

穏やかな日々を約束するから。


「約束だからな」


リザードンは呟いた。

「ま、ちょっとくらい賑やかなのは許容範囲だけどな」

言葉の意図を理解してレッドは笑いかける。

「退屈しない毎日にするよ」


それにしても。


「ねーねー早く名前つけてよう」

ゼニガメが服の裾を掴んで急かした。

「本当に何でもいいの?」
「ふふ。判定は厳しいわよ」

妙なプレッシャーが伸し掛かる。

「そうだなぁ」

言い出したのは自分なのだから自分が決める他ない。彼らもそれを望んで待っている。

ゼニガメから決めちゃおうか。天真爛漫な彼女だが可愛がってもらえるのが嬉しい女の子だ。そうなると他人に自慢できるような可愛らしい名前の方が当然喜ぶ。思いついた単語とか響きだけで決めるのではなくここはやっぱり兄妹であることも考慮して名前を考えてあげたい──


「ローナ」

ゼニガメはきょとんとして目を丸くした。

「僕?」
「そうだよ。フシギソウは──シフォン」
「口の中が甘くなりそうな名前ね」

レッドは小さく笑う。

「可愛い名前!」
「俺は?」

そわそわとしている様子が可愛い。

「ネロはどうかな?」
「洋菓子じゃないんだな──ってお前それハバネロから連想して取っただろ!」

見抜かれてしまった。

「炎タイプだから……」
「僕は?」
「ロールケーキから連想したのかしら」
「おいしそう!」

喜んでくれているみたいだ。

「気に入らなかった?」
「べっ別に」
「素直じゃないだけなんだよねぇ、ネロ?」
「ネロはツンデレなのよ」
「あーもうそんなに呼ぶな!」

ぱっと顔を背けた彼の頬は赤みを帯びていて。

「シフォンもいっぱい呼んであげるね!」
「私も呼んであげるわ。ローナ」
「えへへへ」

くすぐったい気持ちになる。

「幸せになろうね!」
 
 
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