僕たちの道標



すぅっと息を吸い込んで──閉ざしていた瞼を開き、手にしていたボールを地面に放る。

ボールは地面に達するとワンバウンドして白い光を解き放った。光はそれぞれ三つの人の形を象ると程なくして具現化する。

「レッド!」

内一つは光が失せるよりも早く飛びついた。

「これで僕たち家族も同然だよねっ!」


フレンドリィショップで新しいモンスターボールを買い足したレッドはこれからパートナーとなる三人にそれぞれ与えた。最もリザードンは例の件もあって他の二人より早くボールを与えられていたのだが、やはりここは兄妹仲良く足並みを揃えるという意味合いも兼ねて。

「どうしたの?」
「、あ」

レッドは何やら言いづらそうに。

「何か不満でもあるのかしら」
「そうじゃないんだけど」

リザードンは溜め息。

「勿体振らずに話してみろ」
「ええっと」

レッドは視線を受けて観念したのか、

「……名前とか」

ぼそりと。

「どうなのかなって」


名前。


「俺たちの?」
「レッドが考えてくれるのっ!?」
「面白そうじゃない」

二つ返事。

「い、いいの?」
「レッドからのプレゼントってことだよね?」
「そうなるのかな」
「レッドがくれるなら何でも嬉しい!」

笑顔が眩しい。

「で。名前を付けたくなった理由は?」
「えー別にいいじゃん。タダで貰えるんだし」

レッドは苦笑を浮かべながら。

「君たち以外にもゼニガメとかフシギソウとかリザードンはいるからね。君たちだけを指して呼ぼうとした時に俺としては単純に紛らわしいかなとか思ったのもあるんだけど」

肩を竦める。

「全部、リセットして──はじめからにして、始める冒険も悪くないと思わないかい?」
 
 
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