僕たちの道標
……どうしたんだろう。
「あー」
押し負かされたのか諦めたようにリザードンは後頭部を掻いて。発言を怠惰に感じているわけではないようだが見上げる此方との視線はなかなか交えずに眉を寄せながら口を開く。
「信用してなかったんだ」
レッドは目を丸くする。
「話を持ち出しておいて本当はそのままの方が強いからって手術はせずにただ手持ちに加えるだけのつもりなんじゃないかとか。はたまた、あの男たちに受け渡して報酬金を貰うのが目的なんじゃないかとか。疑ってたんだよ」
リザードンは手を下ろす。
「だから──手術も無事に終えてあの研究員も相変わらず関わってこなくて。驚いたんだよ。お前みたいな物好きなトレーナーがいるんだなって感心した。同時にバカ正直だからその時が来たらそこで本当に別れるんだろうなって」
ひと呼吸置いて紡ぐ。
「それだけは嫌だと思ったんだ」
……!
「俺も妹も救われた。一生を費やしたって返せない恩だってことは分かってる。でも、お前になら──俺たちの一生を費やしても構わない」
そうして改めて向き合う彼は。
「レッド」
真剣な表情で。
「俺たちのトレーナーになってくれ」