僕たちの道標
優しくて。温かくて。
不意に訪れる無言があまりにも寂しくて。
「レッドはこれからどうするの?」
ゼニガメが聞いた。
「そうだなあ」
人差し指の背を顎に添えながら。
「二日後にクチバシティの港からイッシュ地方行きの船が出るらしいんだ。でもまだ足を踏み入れたことのない地方だから一人で旅立つのは流石に不安で母さんと相談してる」
そこまで話してレッドは最後苦笑を浮かべる。
「グリーンはトキワジムのジムリーダーだから離れられないし、かといって研究所で手伝いをしてるブルーに無理を言うわけにも──」
「僕も行きたい!」
……え?
「ええっと……?」
「僕もレッドと一緒にイッシュに行く!」
ゼニガメの発言にぱちくりと。
「あ、ありがとう」
一人旅なんて言い出したから心配というか気を遣わせてしまったのかもしれない。困惑を隠しきれずに返すとゼニガメはリザードンの背中に回り込んでぐいぐいと腰を押しながら。
「はやく言って!」
「な、なんで俺がっ、」
「昨日ちゃんと話し合ったでしょ!」
ぎゃいぎゃい。
「き、気を遣わなくていいからね?」
レッドは宥めようと試みるが。
「ちがうもん!」
ぴしゃりと。
「貴方は黙っていてちょうだい」
「は、はい」