僕たちの道標



青い空。白い雲。

初夏の風を受けて髪が靡く。不意の突風に飛ばされそうになってしまう帽子を慌てて押さえていると小さく笑う声が後ろから聞こえた。少女二人の間に立つその青年が肩を竦めると視線を受けた少年もまた柔らかな笑みを浮かべて。

「……退院おめでとう」


まさか。あの後で自分が意識を手放してしまうものだとは思いもしなかったが、何処かで変に躓くこともなく事はトントン拍子に運んで無事手術を終えた。別段驚くこともないだろうが、アルフェイン研究所に関しても警察が立ち入り保護団体の厳格な指導の元活動を見直すという形となり誰もが安堵の息をついた。

それから驚くほど穏やかな時間が流れていって
遂に退院の日はやってきた。喜ばしくもあるが寂しくもある。提示した手術を受けて、安全に退院するその日までが例の契約。


詰まる所──今日が別れの日なのである。


「その」

リザードンは辿々しく口を開いた。

「……ありがとう」

レッドは小さく吹き出して。

「素直なんだね」
「は、はあ?」
「目付きが悪いだけなのよ」

フシギソウが笑う。

「いわゆるギャップ萌えだね!」
「どういう意味だよ」
「あら。褒めているのよ」
「嘘つけ」
「あはははっ」
「お前も笑うんじゃねえよ!」
 
 
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