僕たちの道標
雨の音が戻ってくる。
腰に手を回して取り出したモンスターボールを目前にしても尚リザードンは黙っていた。そのままボールで胸をとんと叩いて──眩いばかりの白い光が彼を呑み込んだ。ボールの中へ吸収されたその人は少しの抵抗も見せることなく。
やがて。
「流石じゃないか!」
見計らったように白衣の男が口を開いた。
「さあ」
レッドはゆっくりと振り返る。
「早くそのボールをこっちに」
……最後まで発言することは許されなかった。
いつの間にか繰り出していたブルーの手持ちのハッサムの鋏が大きく開かれた状態で白衣の男たちの首元に添えられていたのだ。
「──人のものを盗ったら泥棒ですよ」
追い討ちをかけるように傍観者でしかなかった警察たちのポケモンが白衣の男たちをぐるりと取り囲む。当然耳を疑うようなやり取りを聞き逃していないはずもなく──白衣の男は互いに顔を見合わせると冷や汗ひとつと落胆して。
「署までご同行願います」
小さく吐き出した息が白い。灼熱の炎が引いて本来の気温が戻ってきたようだった。緊急を要する事態だったとはいえ傘も持たずに誰も彼もこの雨の中へ飛び出していたものだとは──
「レッド!」
土砂の跳ねる音と慌てふためく声。
「……レッド!」
グリーンは目の色を変えて駆けつける。
「おい、しっかりしろ!」
試しに額に手を宛てがってみたが──なるほど酷い熱を召されている様子。灼熱の炎に冷たい雨、雪山に多少は鍛えられたものと思っていたが度重なる環境の変化に無理が祟ったか。
「レッド!」