僕たちの道標
茂みを抜けた先に少女が"にいに"と発言した青年が横たわっていた。その傍らにはもう一人最初の少女より幾らか大人びて見られる少女が膝をつき不安げな表情を浮かべて案じていたが此方の存在に気付くなり警戒の色を染めて。
「貴女……っ」
「そんな場合じゃないでしょ!」
ぴしゃりと言って除ければその少女は口を噤み顔を背けた。人に信用を置かない態度に何故か不審感を抱きつつレッドは手を引かれるがまま青年の傍らまで招かれる。
炎タイプのポケモン。彼女はそう言っていたがどこからどう見ても背丈のある青年だ。橙色の髪に何かを探るように薄ら開いた瞼から確かに覗かせたのは空色の瞳。身形など特に変わった点は見られないが少女が焦るのも無理もなく青年は肌に汗を浮かべて苦しそうに呻いている。
聞いたことがある。
メヌエルと呼ばれる地ではフィエスタという名の聖樹の加護の元ポケモン達も人間と同じ姿を借りて生活をしているのだと。
「、君たちは」
レッドは恐る恐る口を開いて訊いた。
「ポケモン……?」
少女はこくりと頷いた。
「ピカ」
鼻先に落ちた雫にピカチュウが鳴いた。はっと空を見上げるとぽつりぽつり雨が濡らして。
「歩けるかい?」
「触らないでちょうだい」
訊ねて抱き起こすと緑色の髪に花の蕾を飾った少女が厳しい目を向けて言った。
「妹。手伝いなさい」
「ポケモンセンターは」
「行かないわ」
少女は断固として譲らない。
「お姉ちゃん」
「この先に町がある。そこに俺の家があるから傷薬と……食べ物も用意できる」
レッドは膝に手をついて立ち上がる。
「信用できないだろうけど一緒に来てほしい。ただの野宿より安全は保証するよ」