僕たちの道標
熱い。……熱い。
灼熱が内臓は疎か骨の髄まで焼いているような感覚に陥る。視界に映り込む全てが炎に呑まれ敵も味方も何もかも判別がつかない。まさしく風前の灯火である自分の命がそれでも尚現世にしがみつく理由は何だろう。
「、……」
金銀財宝に埋もれたいだとか多くの人々に評価されたいだとかそんな大層なことは望んでいやしない。自分が求めたのは人間の身勝手で外の世界に投げ出された妹たちと過ごす他の誰とも変わらない穏やかな日常そのものだった。
その為なら。
途切れることのない灼熱を。
夜の闇に誤魔化して呑み込むことができた。
「にいに」
愛おしかった。恵まれていなくとも。
妹たちと過ごせる日々が。
でも。
「リザードン!」
はっと目を開いた。
炎に埋もれていた視界が僅かに晴れて目の前にある霞がかかった現実を映し出す。
「な、……え」
唯一の彼の象徴とも言える帽子は落としたのか見当たらないが判別はつく。未だ激しい勢いで渦巻く炎を臆さず腰にしがみついているのだ。
「なんで」
「君を助けに来たんだ」
その人は答える。
「今度こそ助けたいんだ!」