僕たちの道標



炎が放たれる。

轟々と音を立てるそれは別の生き物かのように畝り獲物に目掛けて飛んでいく。反射的にモンスターボールに手を伸ばしかけたが拳を握って留めた。今尚叫び続ける彼の苦痛を確かに感じ取りながら迫る炎から視線を背けずに。


「……!」


炎は阻まれた。

直前に飛び込んだ影の手によって。


「レッド」

そう呼んだのは──フシギソウである。

「一緒に来てくれるかしら」

彼女は蔓の鞭を構えて続ける。

「貴方なら届く気がするの」


私たちに。

足りなかったのは。


「、うん!」


差し伸べられた手を掴む──"勇気"。


「はあっ!」

リザードンの攻撃に合わせてフシギソウが鞭を振るえば木の葉を纏う小さな竜巻が巻き起こり炎を押し留めた。直後に竜巻を貫くようにゼニガメの繰り出した水鉄砲が炎を完全に消火。

「にいに!」

叫んでも尚攻撃の手は緩まない。再び放たれる炎に隙を突かれて容赦なく弾き飛ばされるゼニガメだったが地面を一度跳ねて即座体勢を立て直し両の足で踏み堪えて地面を蹴り出す。

「妹!」
「任せて!」

フシギソウが鞭を振るえば先程と同じ木の葉を纏う竜巻が巻き起こった。続けざまゼニガメが自身の手のひらに息を思いっきり吹き付けると幾つもの泡が発生して竜巻をコーティングするように纏わりつく。それはもう何度目かの焔を受け止める最後の希望即ち砦だった。
 
 
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