僕たちの道標
レッドはゆっくりと上体を起こした。
熱い──ただの一撃受けたというだけなのに皮膚が焼け爛れてしまったような錯覚を起こしてぞっとする。腕に刻まれた小さな火傷に現実を突きつけられながら。それでも。
「、レッド!」
次に声を上げたのはゼニガメだった。
呼び掛けも虚しく先程と同じ炎の渦に弾かれて地面に体を打ち付けられるレッドの元へ。
「バカ!」
抱き起こす。
「敵うはずないよ!」
訴える。
「本当に死んじゃうよ!」
「大丈夫だよ」
レッドは苦痛に表情を歪ませながらもその肩を借りてゆっくりと立ち上がった。
「なんで」
ゼニガメは声を震わせる。
「……僕たちは他人なんだよ!」
雨に濡れる。
「関係ないのに!」
「あるよ」
はっとして目を開く。
「助けを求めてくれたでしょ」
レッドは口元に薄笑みを湛えて。
「あの子も」
見据えた先には。
「馬鹿だわ」
フシギソウは呟いた。
「ただの正義で自分の命を犠牲に」
「──だって」
踏み出す。
「ポケモンを守るのがトレーナーなんだから」