僕たちの道標
白衣の男は顔を顰める。
「命知らずめ。相手はポケモンだぞ」
レッドは構わず歩みを進める。
「止めたいというだけなら同じポケモンに戦わせていれば済むものを」
「あの子はずっとひとりで戦っていたんだ」
目を細める。
「沢山の痛みと。苦しみと」
雨の降り頻る日も風の吹き荒れる日も。愛する妹を守るべく戦ってきた。己の命を蝕む灼熱を顧みず。全ては他の人やポケモンと変わらない穏やかな日々を過ごすために。
「……だから」
双眸に宿した意志は。
「受け止めなくちゃいけないんだ」
揺らがない。
「っ、レッド君!」
土砂を踏み込んで立ち向かう。何かが向かってくる程度にしか認識していないであろうリザードンは直ぐさま攻撃の意思を示した。吠え声を上げれば呼応するように足下から炎の渦が巻き起こりそれを衝撃波の如く広範囲に打ち出せばレッドの体をいとも簡単に弾き飛ばして。
「……!」
声にならなかった。
「カメックス!」
あの人の意志は汲み取ってあげたい。であれば水タイプの技をその体に浴びせることで受けるダメージを少しでも軽減してサポートを──
「、グリーン君」
ブルーの肩に手を置いたのはその彼だった。
「あいつなら」
視線の先は変わらぬまま。
「大丈夫だから」