僕たちの道標
ざわつく警察に白衣の男は小さく舌を打つ。
「だからこそ私たちがこうして直接立ち会っているんだ! これ以上の被害を出さない為にも責任を持って早急に回収する必要がある!」
白衣の男はそうしてもう一人の男と視線を交わして合図を送るとそれぞれモンスターボールを放り投げた。繰り出されたのは、ラフレシアとスリーパーである。習得する技から推測として立場が危うくなった際に眠り粉や催眠術で警察諸共眠らせるなど強硬手段に出る可能性がある──迂闊なことを口走って刺激できない!
「責任だけの話ならここはトキワの所有地だ。ならジムリーダーの俺にもお前らが掲げている責任ってのがあるんじゃないか?」
隣に並んだ影に目を開いた。
「当たり前だろ。見ず知らずの胡散臭い白衣のオッサンよりお前の方がずっと信用できる」
言葉が詰まりそうになる。
「、でも」
「──俺が昔のお前を否定したのは。バトルに勝利するためだけに戦うポケモンを選び取って戦わせていたからだ」
グリーンは正面の男たちを見据えながら。
「けど今のお前は違う。本当に守りたいものがあるから立ち向かおうとしている」
背中を押すように覇気を込めて。
「いいか──本当に大事のものを守るためなら使えるもの全部使え! それで守れなかったら負けじゃねえ。終わりなんだよ! 再戦の望めないバトルに情け容赦を持ち込むな!」
心音が頭の奥にまで響いた。
「あはは」
帽子の鍔を摘んでほんの少しだけ下ろす。
「グリーンらしいな」
降り頻る雨の中。
「うん。……ありがとう」
込み上げてきたものが雨粒に紛れて落ちた──