僕たちの道標
ただの動物ではなさそうだ。であればポケモンだろうがこの辺りに生息しているのはレベルが低くそこまで警戒する必要性はないはずなのに足下のピカチュウは頬に電気を走らせてじっと茂みを睨み続けている。トレーナーの自己判断だけでは迂闊に警戒を解くことはできない。
地方を徘徊するポケモンならピカチュウよりも控えのミロカロスの方が体力的にも──
「!」
勢いよく飛び出す。
「助けてください!」
第一声。
「……え?」
お、……女の子……?
「えっと」
困惑するレッドに詰め寄ったのは少女だった。何を警戒するはずもない、至って普通の。ただやはりピカチュウは警戒を解かずトレーナーであるレッドの指示を待ち続けている。
身勝手に飛び掛からないでいてくれるのは有難いが人と接するのは久しぶりすぎてどうも警戒云々以前に調子が上がらない。そんなレッドの回答を待つのに痺れを切らしたのか少女は手を掴むとぐいぐい引いて茂みの方へ。
「ちょっと、」
「──昨日の雨でにいにの様子がおかしくて」
程なく茂みを抜ける。
「にいには炎タイプのポケモンだから」