僕たちの道標



駆ける。駆ける。

逃げ惑う動物とポケモン達。横切る立ち木には炎に巻き込まれ炭となってしまったものや葉の代わりに赤々とした火を燃やすもの──

「熱いな」

グリーンがぽつりと呟いた。恐らく彼の暴走が原因で周囲の気温が急上昇しているのだろう。

「ッあれか」

反射的に顔を上げる。

「レッド!」

まだ減速もしていないというのに飛び降りた。躓いて転倒しそうになったが何とか持ち堪えて揺らぐ人影に接近を試みる。

「リザードン!」

叫ぶ声を耳にした途端空色の閃光を引いて。

「──!」

……避けられなかった。

まさか直撃まではしなかったがそれでもあと数センチ横にずれていたならどうなっていたことだろう。過ぎた猛火が背後の緑を焼き払うのを見届けるまでもなくその背に温度を感じながら呆然と立ち尽くす。先制攻撃。今の技は。

「レッド!」

はっと我に返るのと同時に自身の手が腰に備え付けられたモンスターボールに添えられていたことに気付いた。暴走を抑えられないその人は全身を別の生き物のように黒く黒く塗り潰して双眸の空色だけがその人を証明している。

「何やってるんだよ!」

ウインディから降りてきたグリーンが叫ぶ。

「さっさと構えろ!」

肩を並べて。

「ダブルで鎮圧させるぞ!」
 
 
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