僕たちの道標
曇り空が唸る。ぽつり、と雨粒が頬を触れる。
程なく事態に追い討ちをかけるようにして雨は降り出した。指示に従い悪天候の中を飛翔するフライゴンの首を撫でて遠く見渡す。
「っ……!」
そう遠くには行っていないはず。募る焦燥感を抑えつけるように奥歯を噛み締めてそれらしき影を探すが見つからない。
あの時。自分が決めることではないと判断を見送ったのは間違いだったのだろうか。こうなる事態を予測できていれば信用できないと怒号を飛ばされたところで素知らぬ顔をして手術室に放り込んでいたのに。今こうして町中を駆ける警官もパトカーもこの目にすることはなかったはずなのに。後悔の念ばかりが渦を巻いて深く被り直した帽子の影が落ちる。
「レッド!」
反射的に顔を上げる。地上を見下ろせばウインディの背中に乗ったグリーンが此方を見上げて追っていた。直ぐさまフライゴンの首をぽんと叩いて高度を下げていく。
「その様子じゃまだ見つからないみたいだな」
うん、と返して表情を曇らせるレッドをまるで物珍しいものを見るかのような顔でグリーンは見つめていた。なあ、と切り出したその直後。甲高いポケモンの鳴き声が響き渡る。
「よし。見つけた!」
そうして視線を送る先には森があった。目標の位置を示すかのようにその上空をピジョットがゆっくりと円を描いて飛んでいる。
「いくぞ、レッド!」
「──うん!」