僕たちの道標



負けず嫌いで。甚だしく邪慳で。けれど人一倍ポケモンを愛していて。

互いの腕を競い合い、励みにしながら時として許され難い悪が立ちはだかれば共に立ち向かう──良きライバルと呼ぶに相応しい幼馴染み。


グリーン。

トキワシティのジムリーダー。


「げほっげほっ!」

咳き込む声にハッとした。

「あ、兄が」

草タイプの彼女が負傷しているということからリザードンは肉親か否か判別がつかないほどに自我を失ってしまっているものと推測される。医者とは事前に話をしていたのだから鎮静剤が切れるとも考えにくい。それほどまでに彼に投与された薬が猛威を振るっているのだとしても昨日は軽症で済んでいたのだし、自然発症でもある程度は抑制できるものと考えられる。

であれば。あの男たちが居場所を突き止めて遠隔から薬の効果を活性化させる何かを彼に撃ち込んだ可能性が最も信憑性が高い。彼らが話し合いに応じないこと、真っ向から立ち向かって敵う相手ではないことなど男たちも充分に理解しているはず。ならばいっそ暴走させて騒ぎを聞きつけてきた他のトレーナーや警察を味方につけて鎮圧させることでより安全に確実に回収しようと男たちは考えているのではないか──

「レッド」

静かに呼び戻される。

「お前のポケモンなのか?」


ドクン、と。

心臓が鼓動を打った。


「……違う」

そうだ。しっかりするんだ。

「あの子は俺のポケモンじゃないけど」

思考を巡らせるとかそういう意味じゃなくて。


ありふれた感情で構わないから。


「──俺が助けたいんだ!」
 
 
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