僕たちの道標
「皆さん! 落ち着いて避難してください!」
入り口で誘導する看護師の指示に逆らって病院の中に飛び込めば患者や見舞いに訪れていたのだろう人々がパニックに陥っていた。この様子なら呼び止められることもないだろうと状況を逆手にとってリザードンの病室へ向かう。
駆ける。駆ける。次第に機器の焼ける鼻をつく匂いが強くなっていく。思わず顔を顰めながら階段を上り終えた先で息を弾ませているとある一室から黒煙が上がっていることに気付いた。逃げる患者に肩をぶつけられてしまいながらそれでも恐る恐る一歩踏み出せば吹き飛ばされた扉の近くに横たわる人影を見つけて。
「──フシギソウ!」
ああ。
恐れていた事態を引き起こしてしまった。
「しっかりするんだ……!」
急いで駆けつけて抱き起こせば僅かだが閉じた瞼が疼いた。自分でも血の気が引いていくのが分かる。体温が低下して感触を失う。それでも呼吸は安定して頭はスッキリとしているのに。
「ねえね!」
心臓の音がいやに響く。
「う、」
固く瞼を瞑って。ゆっくりと開かれる。
「こっちだ!」
どたどたと騒がしい足音に釣られるようにしてレッドはゆっくりと顔を上げた。
「こんな田舎で爆発騒ぎなんて聞いたこと、」
程なく両者は目を開く。
「レッド!?」
「グリーン……!?」