僕たちの道標
母親は。……目を丸くしている。
「手術が必要なんだ」
レッドは続けた。
「でもその子は会ってまだ間もない赤の他人も同然で──ポケモンなんだ。だから俺の勝手で手術を受けさせるということはできない」
「その子のトレーナーになるの?」
こくりと頷く。
「少し事情が複雑な子だからトレーナーになると言っても一時的な話になると思う……」
更に拳を握り締める。
「ただの好意でどれだけのお金を費やすことになるのか──迷惑がかかるのは目に見えていたから先に話しておきたかった」
続ける。
「お金だけの話じゃない。俺が話しているのは人であれポケモンであれ生き物の命を預かるということだから」
言葉に詰まりながら。
「簡単なことじゃないのは分かってる。でも」
だから。
「驚いた」
そのひと言に。
今度はレッドが目を丸くした。
「貴方がこんなに必死になるなんて」