僕たちの道標
……あ。
「あはは」
遅れてゼニガメは笑った。
「楽しみねえ」
「僕、進化できないんです」
母は目を丸くする。
触れてはいけない点に触れてしまうなんて──今すぐにでも飛び込んで話を逸らしてしまいたいそんな焦燥に駆られた気分だった。
「そうなの」
ゼニガメは黙っている。
「じゃあいつまでも可愛いのねえ」
……!
「そうかなぁ」
「そうよ」
ふふ、と母は笑って。
「だってゼニガメちゃんは女の子だもの」
優しく響く。
「これまでもこれからも変わらないわ」
ぽたりと雫が滴り落ちる。
「あは」
気恥ずかしそうに肩を震わせて笑う。
「ありがとう…………」