僕たちの道標
回想からゆっくりと現実に引き戻される。
自室にあるパソコンと長時間向き合っていたがそろそろ疲労を感じてきた。ゆっくりと息を吐いて壁に掛けられた時計に目を向ければいつの間にか針は午後九時を示している。凝りを解すようにレッドは腕を伸ばし肩を回すと椅子から立ち上がり部屋を出た。
どうして僕たちを庇おうとするの?
彼女の発言の意図することがまだ分からないでいた。理解力が乏しいのもそうだろうがそれで何故不正解なのか。本当は何が正しいのか。
改めようともがいても突き放される。
分からない。……
「あら」
声に驚いて思わず隠れてしまった。
「ゼニガメちゃん」
何も疾しいことはない母が風呂上がりの彼女に声をかけるだけの場面だった。
「髪が濡れてるわよ」
「あー水タイプだから大丈夫なんです!」
「だめです。こっちにいらっしゃい」
母という生き物は他人相手でも容赦がない。
「はぁい」
素直に返事をして母親の元へ。タオルを被せて後ろから水気を優しく拭っていく母と大人しく受け入れるゼニガメの姿は傍目に眺めていると本物の親子のようで不思議と心が安らいだ。
「私。ポケモンは詳しくないんだけど」
母はふと口を開く。
「ゼニガメちゃんは進化するんでしょう?」