僕たちの道標
にいには。
僕たちのヒーローなんだ──
「おかえりなさ、」
あら。とレッドの母は目を丸くした。
「お邪魔させていただきます」
「お世話になりまーす」
テンションに雲泥の差がある少女二人を連れてレッドは靴を脱いで家に上がり込む。
「ごめん。連絡もしないで」
「それはいいけど、お夕飯は?」
「はーい喜んでいただきます!」
「あらあら」
レッドの母はくすくすと笑う。
「急いで支度しちゃうわね」
すっかり日も沈んで橙の空が紺碧に塗り変わる頃。まさか兄が退院するまで病院に居座るわけにもいかないことだしせめて今日一日くらいはまた此方に戻って休まないかという提案に彼女たちは驚くほど素直に応じてくれた。
……ブルーとの約束。破っちゃったなぁ。
「もう」
この人数で食卓を囲むのは初めてだ。
「急に女の子を連れて帰ってくるなんて」
「ただのお友達でごめんなさい!」
ゼニガメは笑いながらご飯を口に運ぶ。
「いつになったら彼女を連れてくるのかしら」
「あら。本当に女の気がないのね」
言いたい放題である。
「突然居なくなったと思ったら帰ってきて」
ひと足先に食事を終えて立ち上がる。
「本当。男の子って分からないんだから──」