僕たちの道標



平気だとは言われたがそれでもやはり頬や膝に貼り付けられた絆創膏がちらついた。

「あはは」

ゼニガメは笑った。

「いやなとこ見られちゃったな」

靴音が響く。

「恥ずかしいなあ」


密かに拳を握り締める。


「……!」

レッドとゼニガメはリザードンのいる病室を目指していた。また何かあってはいけないと一般の病室から大きく離れたその場所に少女の姿を見つけてはっとする。

「貴方」

フシギソウは小さく口を開いた。

「どうして来たの」

彼女の視線は病室の扉へと向けられていた。別段入室を禁じられているという話でもないが今ならその気持ちを汲み取れる。

「帰ってちょうだい」

彼女は冷たい口振りで。

「これは私たち兄弟の問題よ」
「君たちは何もしなかった」

答える。

「問題を引き起こしたのは人間だよ」
「貴方には関係ないわ」
「関係がなかったとしても」

訴えかける。

「事情が分からなくても。君たちが──大丈夫じゃないってことくらい俺でも分かるよ」

彼女は。

その時初めて感情を露わにした。

「分からないわ!」

涙を浮かべたその表情は。

あまりにも苦しくて。

「赤の他人が出しゃばらないでちょうだい!」
「ねえね、」

気付いた時には。

彼女を抱き寄せていて。

「どうして」

少女は繰り返す。

「どうして」

弱々しい力で胸を叩く。

「私たちが何をしたって言うのよ──!」
 
 
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