僕たちの道標
次に放たれた猛火は寸前に投げたモンスターボールから飛び出したミロカロスのミラーコートによって跳ね返された。猛火は突撃した立ち木を一瞬にして包み込み焼き尽くしていく。その恐ろしい威力にレッドは恐怖を覚えながら兎角次の手を考えていた。伝説のポケモンが徘徊をしているなんて話は聞いたことがない──そもそも野生のポケモンがこれほどの威力を持つのだとしても出現場所に見合わない。
「ミロカロス!」
他のトレーナーが被害に遭う前にここは相手が炎タイプであることに賭けて牽制を──
「ハイドロ」
「だめ!」
この声は。
「ゼニガメ!」
腰に飛びついてきたのは──あの少女だった。
「攻撃しないで!」
まさか。
「にいになの!」
茂みを揺らしてゆっくりと姿を現わす。
頭をほんの少し垂れて重く足を進めるそれは間違いなく昨日のリザードンだ。けれど空気から何まで恐ろしい熱と殺気のようなものを帯びている──明らかに昨日までと様子が違う。
「ウウゥゥゥ……」
攻撃をするなと言われたって。
「お願い!」
あんな化け物を。
「、!」
咆哮を上げて飛び出したが次の瞬間急激に熱も勢いも衰えて地面に倒れかかった。何が起きたのか分からず硬直を余儀なくされているとゼニガメはリザードンの元へ。尚もレッドが呆気にとられていると視界の端で茂みが揺れた。振り向けば負傷した様子のフシギソウの少女が腕を庇いながら覚束ない足取りで現れて。
「フシギソウ!」
倒れてしまうより先に駆けつけて支える。
「兄を」
あれこれ思考を巡らせるのは後だ。
今はとにかく──病院に連れていかないと!