僕たちの道標
名残惜しそうに最後まで視線を残しながらジムから離れた。今にも雨の降り出しそうな曇天に自分の心情を重ねながら帰路を歩く。
「──いたか?」
「見つからない」
そんな言葉を交わす男たちとすれ違ったが特に気に留めず振り向かなかった。心配そうにちらちらと見上げて足下をついて歩くピカチュウに笑いかけて返しながら。マサラタウンに。
「ピカピ」
え?
「ピカチュウ?」
急に足を止めたかと思うと長い耳を動かした後帰路を外れて草むらの中へ。呆気にとられたが直ぐに我に返って自分も飛び込む。これが他人から貰ったポケモンなら未だしも長く旅を共にしてきた相棒が勝手に行動を起こすなんて──
「──!」
次の瞬間視界に飛び込んできた光景に青ざめて足を止める。──傷つき、地面に倒れた野生のポケモンが種類問わずに何匹も。ごくりと息を呑んで辺りを見回しながら慎重に歩いていると不意に草むらから何かが飛び出した。
「ピカチュウ!」
幾つもの傷を負って地面に転がる相棒に慌てて駆け寄ったが刹那。
「……!」
傍らを──猛火が駆け抜けた。
「くっ」
何かいる。
「ミロカロス!」
対処しないと。
「──ミラーコート!」