僕たちの道標



お前の戦い方。AIみたいだよな。

ずっと憧れていたんです!


「あーあ。次の相手あの人だってよ」
「勝てるわけないじゃん」


戦いたくないなあ。


「レッド君?」

はっと顔を上げると店員の青年が不思議そうな顔をしてこちらを見つめていた。

「あ」

後ろに人が並んでいる。

「に、荷物はそれだけです」

不自然に吃りながら少しずつ後ずさって、

「失礼します!」


緑に囲まれた町トキワシティ。フレンドリーショップから慌てた様子で飛び出してきたのはお使いを頼まれたはずのレッドだった。

自分としたことが何でもないあの場で物思いに耽るなんて。怪訝そうに見上げて小首を傾げるピカチュウに大丈夫だよ、と苦笑いを浮かべてから改めてトキワの町をゆっくりと見回す。

ふと一際目立つ大きな建物が視界に飛び込んで暫し目を奪われた。トキワジム──自分が満を持して挑んだ時はロケット団のボス、サカキがジムリーダーを務めていた。しかし敗北を機にこれを辞任。以降は長くジムリーダーが不在の状態が続いていたのだがまさかそれを幼馴染みであるグリーンが務める形になろうとは。

今尚鮮明に思い出す──サカキの手持ちはポケモンのタイプに縛りがなくバランスの取れた編成で苦汁を嘗めさせられたものだ。パーティや技編成を徹底的に見直して相性を初めに個々の持つ能力を過信せずトレーナーの策や細かな癖まで見通して指示を出す。


この町は。

純粋な自分に別れを告げた場所だった。


「ピカピカ?」

トキワジムの前まで足を運んだがその先までは踏み出せなかった。今もまた誰かが挑戦をしているのだろう激しい音や鳴き声が建物の中から微かに聞こえて空気を震わせる。


でも。


君に会わせる顔がないんだよ。

グリーン。俺は。


まだ。あの時の答えを見つけていない──
 
 
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